置き配の変わるサービス、理想と現実
置き配の変わるサービス、理想と現実

置き配の変わるサービス、理想と現実

国交省「置き配の利用拡大に向けて国土交通省は、配達員がマンションのオートロックを自由に解錠できるように取り組む」

宅配業界が配送業務追いつかなくて大変だから、国としても手を貸してなんとか楽にしてあげたいなっていう業界忖度のお話ですよね。国交省がなんかいってんなていうのは知ってたんですが、騒がれたんで安全ですってばみたいな反論を試みたらしくニュースになってたので所感。

サービスでは、配送人の身元を確認し、開錠を記録した上で、受取人が登録した荷物の配達に限って一時的な開錠が可能。導入にはマンション管理組合などの合意が必要だと中野国交相は説明し、「防犯やセキュリティは大前提」と強調した。
ITmedia NEWS:置き配普及へ「配達員が自由にオートロック解錠」は「事実無根」 国交相、SNSの懸念に反論

“同意事項に同意のうえ、配達を行う際に、オートロックの解錠をすることを希望する”を設定いただいた場合、当社が配達のために、お客さまの住宅やマンションなど集合住宅に設置されているデジタルキーを活用し、オートロックを解錠後、置き配を行うこと、加えて次号の注意事項にお客さまがご了承いただいたものとみなします。
ヤマト運輸:デジタルキーを利⽤した置き配サービス

一応、管理組合の理事もけっこうな年数経験がありまして、その観点も含めて言うとヤマトもなにいうてんねんとは思う。「同意事項」の内容が判らないのでクリアにはなっている可能性もあるけれども、一応なにが問題か説明すると、マンション入り口のオートロックから受取人住居の玄関までのエリアは受取人個人の敷地ではなくマンションに居住している全員の敷地(共有部とかいいます)内という位置づけなんですね。その共有部に居住に関連しない人物を侵入させることについては、侵入させた者はその責任が発生するわけなんですよ。置き配ではない宅配業者さんとかにも、オートロックあけて玄関先まで持ってきてもらったりすると思うんですが、それも実質責任が発生してます。お友達を呼んで、部屋の中に入れるまでもそうです。日本は治安がいいということもあるのでそのへんの防犯意識が低いんだよなと感じるところです。ただ局地的には外国人も増えているので(なかには不法滞在者が集まっている地域もあって怖いです)あんまりのほほんともしてられないのになーと思います。

判りやすい事例をひとつ。

ある日正体不明の男性2名が、とつぜん我が部屋のインターフォンを鳴らして訪ねてこられました。オートロック入口のインターフォンじゃないです、玄関ドアのです。インターフォンとチェーン越しで対応したところ、「このマンションを孫の通学に購入したいと思って棟内に入った。なかの様子を知りたかった。住人の住み心地を聞きたかった」と言う。どうやって中に入ったか聞くと、たまたま出てきた住人に理由を話し入れてもらったとのこと。なるほど理由の通り、2人は老齢の男性と学生ぽい男性でした。

しかし、お待ちください・笑。懸命な方は判ると思いますが、彼らが言葉通りの善良な人間と誰が正しく判断できますか?もしかしたら棟内に侵入したことによって、放火、強盗などなんらかの犯罪を目的にした人たちだったかもしれません。
一応、考えなしなだけで言葉通りの目的しかもたない人たちというのはしつこく会話したなかから読めたので、非常識である点と見学や意見を聞きたいというなら入口に掲示してある管理会社あるいは近隣の不動産屋さんへまず相談するのが筋、不審人物と通報されてもおかしくないことをしていますよと説教して外へ出てもらいました。うかつに棟内へ入れた住人も言語道断なので、管理組合から警告の貼り出しをお願いしました。

たまたまこのときは事なきを得たのですが、斯様に住人を含めて考えなしな人は多く、犯罪者はそういう側面を利用して棟内へ侵入を果たすわけです。考えなしな人は想像したこともないかもしれないですが、棟内に人をいれる許可を出す、というのはそういった責任をもっているものなんですよね。

なので日々なんとなく許している他者の侵入は、許可した住人が家にいる状態に発生することが前提になっていて監視がしやすく責任も取りやすいので、意識もしないほどだいぶ緩やかになってはいます。そうでないと生活しにくくなってしまいますので。ただ、ヤマトのこのサービスは荷受人が棟内に不在のときのためのサービスというところが問題になってきます。
重ねてページだけではよく判りませんという前提ですが、ヤマトがそのへんを考えてないとは思えないので、サービス利用開始前になんらかの賠償責任あるいは免責を管理組合に対して取り交わすなどのステップがあると思ってます。管理組合の合意を取り、デジタルキー利用の許可を組合から出す、といった手順ですね。組合から、サービス利用に際して共有部の侵入を許可しますよってことです。

ただし、デジタル「キー」を不特定の業者に渡すことについて懸念をもつ住人は多いと思うので、その合意が得られるのか?というのがわたしの所感です。
近年、宅配が増えたことで宅配業者からの宅配を請け負う「個人事業主」が増えています(ヤマトが個人事業主を使っているかは不明です。佐川急便は繁忙期にそれらしき配達員がきたことがあった。弱小業者は確実に使ってると思う)。そういった一時的なバイトや個人事業主が問題で、Amazonでとくに顕著なんですが中身のすり替えがあったり、配達されなかったりなどのニュースも増えています。少なからず、このサービスの利用のためにはそういった問題のある配達人にもデジタルキーを貸す場面があるだろうという懸念は当然のごとくでてくると思っています。わたしが理事のあいだにこの相談がきたら、総会に出すことなく理事会で止めると思います。

もとよりデジタルキーが導入されているマンションも全体からしたらまだ少なめと思いますし、それ以前に宅配ボックスあるじゃんていうのもありますよね。本当に必要とされるサービスなのか?とは感じますね。判りますよ、ケース買いのお水とか、宅配ボックスから部屋まで運ぶの辛いっていう面もあるよねっていうのはね。そう頻繁なことではなかろうもん、日時指定でもってきてもらえばええやん。

まぁ総括しますとこのヤマトのサービス、サービス自体はシステム面のセキュリティを大変考慮されてすごくいいものだとは思いますが、敵は「人間」なのでっていうところですね。